R-11修復のページへようこそ。2004.02.01ゲイン測定結果を追加

・松下無線の3球式ラジオを入手し、修復しましたのでその様子の紹介です。筐体はリアカバーもふくめ、すべてベークライトでできたコンパクトなラジオです(松下はベークライトではなく、マーツライトと呼んでいました。一種のプラスチックで、現在の松下電工が製作していました。日本初の小型プラスチックキャビネット使用のセット で発売と同時に市場の話題となり、新しい需要を喚起したそうです)。少し汚れてはいるもののひび割れや欠けはなく、よい状態といえます。入手した時の様子は、電源コードがシャーシの根元で切れかかっており、また、内部の配線も手直しした跡がありました。そこで、まず、配線図をおこしながら、分解、清掃することにしました。

・入手当時の正面、背面の写真、およびリアカバーをはずした写真です。小さな筐体の中に真空管、トランス、コイル、スピーカーが大変うまく詰め込まれています。機銘板には松下無線株式会社とあります。


・いかにコンパクトかをトランジスタラジオと比較しています。隣のトランジスタラジオはソニーのヒットモデル:ソリッドステート11です。幅はほぼ同じ、奥行はトランジスタラジオの2倍弱、高さは少し高めといったところです。ST管を使用した3球式ラジオにしては大変コンパクトだと思います。




・中身を取り出してみました。埃をかぶってはいるものの、保存状態はよいほうです。小さなシャーシーにコンパクトにまとめられています。使用されている真空管は、検波増幅用にUY-57S、電力増幅にUY-56、整流にKX-12Fでした。


・初段の検波・増幅管はグリッドが頭についている分、背が高くなるため、ソケットを1段下げています。



・シャーシの裏側です。内部には大きなブロックコンデンサ(ペーパーコン)、チョークコイル(左端に配置)、同調バリコン(右上)、再生バリコン(左上)が見えます。スペースが限られるため、部品は立体的に配置されています。回路図をおこすには、部品を取り外しながら、結線を調べる必要があります。



・取り外せるパーツは全て取り外しました。トランスやコイルは組み立て時の参考にするため、各リードに行き先を書いておきます。このあと、各部品の性能をチェックし、再利用可能かどうか判断します。電源トランスは、先ずテスターで、導通チェックや絶縁チェックを行なったあと、1次側に数ボルト程度の交流電圧を加え、2次側に出る電圧を測定、100V入力換算で正しい電圧が出ているかをチェック。特に問題ないようなのでその後100Vを入力して様子を見ました。このトランスは使えそうです。チョークコイルもOKでした。約40H(ヘンリー)ありました。チューブラコンデンサは絶縁度が低下しているものあり。抵抗のほとんどは表示値より1割程度大きな値を示しました。各真空管のヒーター/フィラメントは断線しておらず、使用できそうです。マグネチックSPもOKでした。



・現物からおこした回路図です。+B巻線の接地側端子にチョークコイルを入れており、一般的な平滑回路ではありません。また?で示したポイントが遊んでいます。これはおそらく、セミ固定バイアス方式の回路だったものを誰かが後にセルフバイアス方式に変更したのに違いありません。


・その後、何人かの方からアドバイスをいただき、また、本機の前のモデルと思われるラジオ(R-10)の広告に記載されている真空管から判断して左図の回路がオリジナルであろうと思います。このラジオの特徴はチョークコイルをB巻線のアース側に入れ、チョークコイルのDC抵抗による電圧降下を出力管のグリッドバイアスとして用いている点です。R-10の広告(このページの一番下)によると、本方式をセミフィクスドバイアス(準固定バイアス)方式と呼んでおり、【抵抗増幅式並びにセミフィクスドバイアス法を採る結果、音質流麗、音量豊富】とあります。確かにセルフバイアスの場合にはカソード抵抗の値が小さい(たとえば1.5kΩ)のでパスコンの値をある程度大きくしないと(たとえば5uF)低域での増幅度が落ちてしまいます。本方式の場合、カソード抵抗やバイパスコンデンサがないためにこのように低域でゲインが落ちることはありません。グリッドに加えるバイアス電圧(基本的に電流は流れない)を得るに際しては、抵抗値は大きくてもよく(1MΩ)コンデンサの容量としては比較的小さなもので足りるので大容量のコンデンサが入手困難なときにはこの方法は良いかもしれません。

・ヒーターの配線をおわり、チョークコイル、ブロックコン、バリコン、電源スイッチを取り付けたところ。

・配線終了。出来るだけオリジナルに近づけたつもりです。

・正面から見たところ。

・斜め前から見たところです。手前の再生コイルの上部に付いているのがグリコン(200pF、黄色の筒状のコンデンサ)とグリッドリーク(1MΩ)です。グリコンは最初ついていたものはこの写真のように端子が錆びており感度が悪かったために、変更しました。ペーパーコンのように見えますが、中身は円筒形のセラミックコンデンサをガラスヒューズの筒の中に入れ、周りにペーパーコンからはずした紙を貼り付けたものです。

・後ろから見たところです。


修復完了です。自宅の2階から下方にたらした数メートルのビニール電線をアンテナとして使用すると関東のラジオ局は全て受信できました。あまり大きな音量は期待できませんが、夜中にNHKのラジオ深夜便を聞くには十分な音量です。

・さて、性能はどの程度でしょうか、測定してみました。アンテナ端子にSGから1kHz、30%変調のAM波を入力し、スピーカー端子にどれほどの振幅が現れるか見てみました。再生バリコンを調節し、発振手前で止めた時のゲインは、入力電圧=50dB(0dBu=1uV)の時に30Vppでした。ゲインは実測で約90dBです。各ステージのゲインがどうなっていたかを左図に示します。SSGから1kHz30%変調の1000kHz変調波を出力し、アンテナ端子(AS)に接続しました。再生がかかっているため、アンテナ入力から出力段(47B)の手前までで2000倍のゲインがあることになります。出力段のゲインは15倍でした。

松下電器のお客様ご相談センターにこのラジオの発売時期と価格を問い合わせました。昭和11年発売、定価27円だったそうです。また、当時の資料は残ってないという返事でした。その後、独自で調べたところ、R-10の広告が見つかりました。R-11は後継機だと思われます。





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