このラヂオは2000年5月に骨董市で購入したものです。



前から見たところです。




後ろ側からみたところです。
残念なことに、パーマネント・ダイナミックスピーカーに交換されてしまっています。また、電源コードはぼろぼろになっており、ところどころ被服がはがれており、このままではとても通電できる状態ではありません。



アンテナ端子と機名板。
機銘板には
   国民5号型
   ナショナル受信機
   電源電圧 50・60−90・100V
   消費電力 0.385A、30W
   受信周波数帯 550−1500KC
   感度階級 微電界級
   電源電圧 50・60−90・100V
   No. 1673
   松下無線株式会社
と記されています。また、アンテナ端子は空と地の2端子のみで、PU端子はありません。




分解、修理するために筐体から取り出したところです。真空管は割れないようにはずしてあります。右上に見えるのがブロックコンデンサー、左側にあるのが電源トランスです。真中あたりに別のブロックコンデンサが付いていた形跡があります。その周囲は溶け出したと思われるピッチで黒く汚れています。




シャーシーの裏側です。 高一コイルは比較的新しいものに置き換えられていました。また平滑回路に使われていたと思われるブロックコンデンサーは取り外され、チューブラコンデンサーに置き換わっています。



木箱の底に貼付されていた回路図です。写真ではうまく写らないので、これを書き写したものを以下に示します。



この写しを参考にシャーシー裏の配線を見ながら回路図を書き起こします。そのようにして出来上がった回路図も下図に示します。


オリジナルと異なっているところ(後から手を加えたと思われるところ)を赤色で示します。

スピーカーが交換されフィールドコイルの代わりに3キロオームの抵抗がついています。平滑回路のブロックコンもチューブラの電解コンにへんこうされていました。平滑回路の出力側のコンデンサがショートし、フィールドコイルに規定値以上の電流が流れて断線してしまったのが原因でしょうか。また、オリジナルでは付いていなかったボリュームが追加され高一コイルも新たな物に変更されています。再生側巻線もプレートに接続すべき端子は半田付けした後がありませんでした。これでは再生がかからずゲイン不足になります。またボリュームを挿入していることからも、かなり強電界地域で使用されていたもののようです。 回路図を書き起こしたあと、実体配線図をつくります。また再度組み立てる時のためにいろいろな角度から写真をとっておきます。さあ、これから分解作業に入ります。各部品を壊さないように丁寧に半田を溶かし部品をはずします。トランスから出ているリードはどこに接続されていたかを記載したタグをリードごとに付けます。コイルのボビンにも必要であれば接続先を書いたタグを貼りつけておきます。


取り外した部品及びシャーシーの写真です。抵抗は測定してみて抵抗値が大きくずれていなければ使えそうです。ペーパーコンデンサーは絶縁性能が劣化しているものがかなり有ります。 50V程度印加し測定した時の抵抗値は数百キロオームにまで低下しているものもありました。新品におきかえたほうが無難です。レストアの方法としては、ペーパーコンの表皮をはがし、新たなフィルムコンにまきつけることにします。ペーパーブロックコン(写真左上)は出ている4端子のうち、3端子までがオープン状態になっていました。中身を取り出し、電解コンデンサーを詰めることにします。



取り出したペーパーコンデンサーです。表面はかなり汚れてはいますが、ヘアドライアーであたためながら蝋燭(ろうそく)をたらして洗浄すると結構きれいになります。左下に見えている抵抗とコンデンサがパラに付いているものがグリッドリーク用のRとCです。



ペーパーコンをドライヤーであたためながらピンセットで丁寧に表のペーパーをはがします。



はがした表紙はほぼ同じ外形、容量のフィルムコンに巻き付けます。この場合もトライヤーであたためながら巻き付け、蝋で固定します。写真の左2つはこのようにして出来上がったものです。右端のものはこれから巻く予定のフィルムコンです。とりあえずASCのフィルムコン(400V耐圧)を使っています。



中身を入れ替える予定のブロックペーパーコンです。容量に関しては8uFとだけしか記載が無いためどの端子が何マイクロなのかもわかりません。少し筐体がふくらんでおり、ピッチとの間に隙間が空いています。



半田ごてをあて、筐体の接合部をとかしながらケースをこじあけ、中身を取り出します。左端取り出した中身。右端は詰まっていたピッチです。コンデンサは4個のブロックで出来ていましたが、大きさの違いから、 3uF+3uF+1uF+1uF(合計で8uF)のようです。



取り出したコンデンサの代わりにケミコンを詰めようとしています。耐圧450V、容量は10uFです。最近のケミコンはずいぶんと外形が小さなものが出来ています。写真のものよりももう少し小さなものもあります。



端子板にケミコンを取り付けたところです。オリジナルではコンデンサが4個入っておりましたが、今回詰め込む数は3個とし、もう1つの端子は共通アースにすることにしました。左側のケースは再度半田付けをし、ほぼ元どおりの形にもどしました。



端子板にシーリング用のふたをつけているところです。並四ラヂオを修理した時はエポキシ樹脂で作りましたが今回は手元にあったシリコンボンドで作ってみることにしました。ボール紙で型をつくり、シリコンボンドを流し込み、固まるのを待っている状態です。



ケースに端子板をセットし、ほぼ元の形状にもどりました。今回は端子板の形成およびシーリングにシリコンボンド(信越化学)を使用いたしましたが、固まった後も端子が少しぐらつきます。シリコンゴムで固めたのでしようがないですが。強度的には問題ないと思います。#次回はやっぱりエポキシかなぁ。。。 シリコンボンドを使用する時の注意事項。シリコンボンドの中には、銅を腐食させるガスを出すものがあります。そういったボンドを使用すると、そのうちケースの中で銅線が腐食してくるので要注意です。私が使用したものは信越シリコンのKE490で、腐食が起こらないタイプのものです。



今度はグリコンの修復です。いままで修理してきたラジオに使われていたグリコンはマイカーコンデンサ(雲母畜電器)でしたが、今回のものは100uuF(=100PF)のペーパーコンが付いていました。適当なマイカコンが手持ちに無かったので、このグリコンの表皮を再利用してみせかけだけのペーパーコンに仕上げることにします。



一番上の写真がこれから表皮をとろうとしているグリコン。一番下の写真は220PFのセラミックコンデンサーです。これくらい小さくても耐圧は100Vありますのでグリコンに使用可能です。真ん中は筒形ヒューズです。このなかの糸ヒューズを取り出し、かわりにセラミックコンデンサーを入れようとしています。



表皮をはがしたグリコンとその表皮です。一つ上の写真ではかなり汚れていますが、溶かした蝋で汚れをおとすとごらんのようにある程度きれいになります。


  
筒形ヒューズの中にセラミックコンデンサーをいれました(左図)。
そのままでは元のペーパーコンよりもかなりスリムなので、茶封筒の紙をまいて太くします(中央)。リード線を付けて出来上がりです(右図)。横から見ると電極部が小さいのが少し変です。もう少し外観にこるならばもとのペーパーコンの両側の電極に使われているキャップを取り外して使うという手もあります。そこまでやれば完璧です。

バイパスコンデンサも中身を入れ替えることにしました。
 
左の写真は、はがした表皮とチューブラ・ケミコンです。右の写真は新たなコンデンサ(右)の周りに先ほどはがした表皮を貼り付けたものです。

次は、グリッドキャップの補修です。真空管をはずそうとしたら、グリッドキャップのクリップがさび付いており、強引にとろうとしたところ、セメントがとれ、キャップが外れてしまいました。
ジュメット線は0.5mm程度しか出ていなく、このままではグリッドキャップを半田付けするのは困難です。そこで、下図のように極細の銅線をジュメット線の頭に半田付けし、その線を少したわませた状態でキャップに挿入して半田付けをすることにしました。こうすることにより、ボンド付けした後、少しくらいキャップがぐらついても接合部の半田が外れることはありません。接着に用いるボンドはどのようなものが良いのでしょうか。2液式のエポキシで固めるのが無難だと思います。この場合の注意点は、エポキシをキャップの中に充填することです。キャップの周囲だけでガラスと固定していると、少しの力でぽろりと取れてしまいます。また、キャップの中にセメントが残っている場合、すなはち、セメントがガラスの曲面を保ったままの状態でのこっている場合、エポキシ以外の強力なボンドをセメント面に薄く塗り、接着させる方法もあります。今回はこの方法をとりました。使用したボンドはソニーボンドSC608です。このボンドはUL取得、自己消炎型電子機器接着剤で、安心して使用できます。






上記の手順で仕上げたものです。用いたボンドが白色のため、キャップの周りが少し白くなっていますがナイフで削れば落せます。


取り外した抵抗が再使用できるかどうかテスターで値を測定してみました。表示値に対し測定値は以下のようになっていました。
 表示値      測定値
 1MΩ      1.098Ω
 500k       561k
 250k       262k
 50k       48.9k
 30k       30.8k
 750Ω      695
ということで、抵抗ははずしたものを再利用することにしました。炭素皮膜抵抗は経年変化で抵抗値が大きくずれることはないようです。ソリッド抵抗の場合には、抵抗値が大きくなっているものをいくつか見たことがあります。


準備が整ったら、部品をシャーシに組み込みます。左の写真は主要部品を取り付けた後、ヒーターのみ配線し終わったところです。



配線し終わったところです。ボリュームと豆コンは配置を換えました。このページの上のほうに分解する前の内部の写真がありますが、それと比較するとずいぶんすっきりしています。内部配線は、高圧部分(+B電源の配線)は二重絶縁線を、その他の部分はエナメル線にガラス繊維で出来たスリーブをかぶせて使用しました。茶色か黒があればよかったのですが手持ちがなかったため白色のスリーブになってしまいました。



UZ-57、58ソケット裏の拡大写真です。抵抗はオリジナルのままです。コンデンサーは全て入れ替えました。ペーパーコンデンサの表皮をはがして貼り付けたフィルムコンはサイズが合わないものもあり、ちょっとはみ出しているものもありますが、ある程度は昔の雰囲気を出していると思います。



修復が終わりました。真空管を挿入したところです。左端にあるスピーカーはワルツと書かれているダイナミック・スピーカーです。フィールドコイル式のダイナミックスピーカーからこちらに取り替えられていたものです。動作するようなので、このままこれを使用します。青緑色のコーン紙がとてもきれいなスピーカーです。



ケースに入れて、通電したところ。文字盤がパイロットランプに照らされていかにも古そうなラジオの雰囲気を出しています。



セット裏側の写真です。


メールはjnkei@yahoo.co.jpへ

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