ICF-5900
・ICF5900です。ソニーのBCLラジオの中でも最も人気のあるラジオではないでしょうか。オークションを見ていても、5900と名が付けばジャンクであろうが部品が欠品してようが、かなりの高値で取り引きされています。落札したラジオが何の問題も無く当時の高性能を発揮すればよいのですが、素人が内部をいじくったものも結構あるようで、そのようなラジオは性能が落ちています(経年変化による劣化もあるとは思いますがそれほど大したことは無いのではと思います。このラジオは内部の基板の取り付け方や応力による基板のたわみに対して大変敏感で、バックカバーをあけただけでも調整がずれてしまうことがあります。したがって最終調整はカバーをつけた状態で、調整カバーのみをはずした状態で行います)。たいていのラジオは信号発生器やオシロがあれば調整が出来ますが、このラジオを調整しようと思ったらサービスマニュアルが必要となります。というのも、使用されているセラミックフィルターが10.7MHzであるとは限らず、部品納入状況により10.61MHzから10.79MHzまで7種類のうちのどれかが使用されているからです。10.7MHz以外のフィルターがついていた場合、そのことに気付かずに調整してしまうとスプレッド・ダイヤルの片方端で感度が低下することになります。第1IFに用いられているセラミックフィルターは帯域幅が350kHzもある広帯域のものを使用していますので調整が正確なら両端での感度低下はそれほどひどくはありません。第2、第3IFに用いているセラミックフィルターは第1IF用とセンター周波数は同じですが帯域がせまく、第1IF用のフィルターとは互換できません。更に、他の5900から取り外したフィルターとも互換が取れるとは限らず。フィルターを交換する時にはこれらのフィルターを3個とも同時に変更する必要があります。交換後は当然調整が必要です。
1.ICF-5900の調整(その1)
・このラジオはフィルムのダイアルスケールが少しずれていたのと、スプレッドダイアルが時計方向にまわすにつれ、受信感度が悪くなるという症状でしたので、再調整にチャレンジしました。この写真はリアカバーをはずした所です。スピーカー近くのシールド板に貼られている赤色のシールはこのラジオに用いられているセラミックフィルターの中心周波数を示しています。この色が赤であれば10.7MHz、黒であれば10.64MHzという具合に、色により10.61MHzから10.79MHzまで30kHzきざみで7クラスに分けられています。ここで注意を要する事は、たとえシールの色が赤色であっても中心周波数が10.7MHzにぴたりとあっているとは限らないという事です。そういうものもたまたまあるかもしれませんが、数kHzのずれがあるものと思ったほうが無難です。
シールの色と、対応するセラミックフィルターのIF中心周波数は下表のようになります。
ラベルの色 |
緑 |
黒 |
青 |
赤 |
橙 |
白 |
黄 |
IF中心周波数 |
10.61MHz |
10.64MHz |
10.67MHz |
10.70MHz |
10.73MHz |
10.76MHz |
10.79MHz |
・調整前と後でどの程度感度が変化したかをグラフにしてみました。調整前はスプレッドダイアルを時計方向(+方向)にまわすと感度が極端に落ちていました。最調整後は全体的に感度が6dB程度アップしたのと、+150kHz方向で極端に落ちていたゲインも20dB改善しました。センター(0kHz)に対して感度特性が左右対象になっていないのは調整が未熟な為でしょう。何回か調整をすればもう少し良い特性が得られるようになるかもしれません。グラフ上では調整後も少し感度差がありますが、実使用上はほとんど気になりません。調整前は明らかに+方向の端で感度が落ちているのが実感できました。
・スイッチの接触不良、ボリュームのガリがあったため、接点を洗浄しました。接点やボリュームは表面が汚れていると接触不良を起こすので脱脂・洗浄スプレーで洗浄した後、必要に応じて接点復活材を塗布します。ボリュームは脱脂・洗浄スプレーだけで十分ガリはとれました。下手に接点復活材やCRC556をスプレーしないほうがよいでしょう。スライドスイッチは接点復活材をスプレーし、接点表面の保護をします。
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