ICF-6800修理の部屋です
修理依頼のあったものや、手持ちの6800の修理の様子を載せていく予定です。

8.電源コード直出しのICF-6800A (2007. 2. 12)
・オークションで落札したICF-6800Aです。この受信機は純正の電源コードが無くなったためか、一般的な電源コードをセットのACインレットの一部を切りかいた穴から直に引き出していました。電源コードをコンセントに挿入すると問題なく動作しました。ただ、電源コード直だしは気分的に良くないのでオリジナルの状態に戻すことにしました。写真はケースからセットを引き出したところです。矢印に示すように、電源スイッチで直接AC100Vを入り切りできるようにプリント基板のパターンをはがして改修されています。オリジナルのICF-6800Aでは2次側のラインを入り切りしているので、電極間の空間距離も狭くてよいのですが、このスイッチで1次側の100Vラインを入り切りするのはスイッチの定格上問題があるかもしれません。

・電源周りはどうなっていたかというと。。。。オリジナルのICF-6800では見ることの無いフューズフォルダーがついています。1次側にフューズが直列に挿入されていたのです。もしも何かあった場合にこのフューズが切れるようにとの配慮からでしょう。フューズ定格は0.5Aでした。かなり電気的知識がある方の改造だろうと思います。今回の改造で、AC/DC切り替えのスイッチ(ACインレットに電源ケーブルを挿入すると、自動的にバッテリーからAC100Vに切り替わるスイッチ)が切り取られていましたのでこのインレットをジャンクのICF6800から取り外して交換。電池ボックスのスプリングも無くなっていましたのでやはりジャンクのICF6800から取り外して追加しました。これで元通りになりました。ICF-6800AはICF-6800にあるようなカウンターの暴走は無いようで、感度良好に全てのバンドを受信しています。


7.カウンター表示は正常なのにSWを受信しないICF-6800A (2006. 12. 9)
・ICF-6800Aの修理をしました。6800Aは6800にあるようなカウンターの暴走によるSWの受信不能といった症状はあまり聞きません。今回の6800AもSWにしたときのカウンター表示は正常です。ただ、まったく放送が受信できない状態です。MWの受信は正常、カウンター表示も正常です。いろいろ調べた結果18.6MHzのクリスタルの不良でした。両端をテスターで測定したところ数Kオームありました。これを交換して修理完了。感度はなかなかいいですね。


・写真は取り外したクリスタルです。NDKと書かれているので日本電波工業のものでしょう。


・ICF-6800Aのメイン基板の写真です。基本的には6800と同じです。違いは矢印で示すところように感度を切り替えるためのスライドスイッチが付いていることでしょうか。。


6.短波受信せず・カウンター表示欠け (2006. 11. 19)
・このICF-6800は入手時、SWが受信できず、また、表示されないカウンターの桁があります。短波が受信できない原因はPLLループ内のトランジスタのhFE減少というお決まりのパタン。トランジスタを数個交換してOKとなりました。


・カウンタの桁の表示不良はカウンターモジュール内のトランジスタ不良でした。モジュールの中のシールドケースの中に入っているトランジスタです。左の写真のシールドケースの上部を開けるとトランジスタが出てきます。


・シールドケースの蓋を開けたところです。トランジスタ交換で無事、表示するようになりました。今回はトランジスタの不良でしたが、特定の桁が表示されない場合には表示用LEDがマウントされている基板周辺のハンダ付け不良によることもあります。


5.冬しか修理できないICF-6800 (2005.12.30)
・このICF-6800は私が普段使用しているものなのですが、不良症状が冬(つまり、部屋の温度が低いとき)にしか出ないというものです。症状は という訳で、修理は症状が出る冬が最適というわけです。部屋の暖房も入れずに寒さを我慢しての修理です(部屋の温度は10度前後です)
・結局、カウンターユニット内部の部品(トランジスタ)劣化でした。添付の写真はカウンター内部の写真です。シールドケース(矢印で示す)を開けて、唖然。これじゃ製造ラインの人もさぞ大変だったろうと思われるぐらい部品が空中を飛びかっていたり、部品の上に別の部品を重ねるようにおいたりと複雑なマウントです。プリント基板であるにもかかわらすこのような部品のマウントの仕方はいかにも格好が悪いのでシールドケースをかぶせて隠蔽したと思われても仕方がないくらい部品配置がビミョウです。


トランジスタを交換して無事修理完了。取り外したトランジスタのhFEは15前後にまで低下しておりました。せっかくラジオをばらしたので、ついでにオーディオ基板のコンデンサを変更することにしました。
・変更前の基板の様子です。一般的なケミコンが使用されています。電源ライン(9Vライン)のケミコンの耐圧が10Vなのが気になります。新品の乾電池だと1.6V以上ありますし、オキシライド乾電池だと1.7Vはあるので耐圧オーバーです。少しの耐圧オーバーなら壊れるということはありませんが、気分的に良くないです。


・ケミコンは音質が良いといわれているものに置き換えました。また、9Vラインのコンデンサは16V耐圧のものに置き換えました。セラミックコンデンサはフィルムコンに置換しました。抵抗も、音質的に良いと言われているものに置き換えればよいのですが、今回は見送りました。


・前方から見たところです。変更後の音質ですが、気分的に良くなった印象です。


・交換のため、取り外したコンデンサ類です。なお、これらのコンデンサをチェックしてみましたが特に劣化は無いようでした。この時代になるとケミコンも性能が上がっているようです。


4.ソニーサービスで修理不能といわれた6800 (2005.12.04)
・このICF-6800は当ホームぺじを見た方からの修理依頼品です。症状としてはSWのバンドセレクターのうち、0・4・6・8・9の個所で、デジタルカウンターが暴走したり、全く異なる周波数を表示する状態です。また、各バンドの高いほうにチューニングしようとすると、表示周波数が固定値を示したままで受信不能になってしまいます。左の写真はその様子を撮ったものです。依頼者いわく、ソニーサービスではスイッチ部品が無いとのことで、修理不能といわれたとのことです。


・修理のためリアカバーをはずそうとしたところです。この6800はまったく手付かずの状態です。つまり、ソニーサービスでは中をばらしていないということです。中身を取り出すには矢印で示すテープを取り外す必要があるのですが、ここについている紙テープはこびりついており、製造当時のままであることを示しています。ただし、修理するものにとっては、手付かずのラジオは修理しやすいです。誰かがいじって、変に壊れたラジオほど修理にてこずるものはないですから。


・修理のため取り出したところです。内部は非常にきれいです。良い環境で使用されていたものと思われます。


・この6800のシリアル番号は10760でした。矢印に示すように番号の付いたシールが張ってあります。また、コネクタの周囲に銅箔テープがまきつけられ、グランドパタンと接続されています。かなり初期の6800だと思われます。この状態で、波形をチェックし不具合箇所の特定を行います。といっても、経年変化で起こる今回の症状はこの機種特有の持病で、チェック箇所・変更箇所もほぼ決まっています。ソニーサービスが言うところのスイッチ部品では決してありません。


・PLLループ内にある分周回路の入力部分の信号波形です。振幅が不足しており、周波数も一定していません。トランジスタのHfe(増幅率)が経年変化(製造不良か?)で劣化すると、このように振幅が小さくなり、PLLのロックが外れます。なお、MW受信時の周波数表示は問題ないため、VFOからの出力は問題なさそうです。実際、振幅をチェックしてみましたが、十分なレベルでした。


・分周回路の前段のトランジスタを2個交換しました。今回は、もと付いていたトランジスタは付けたままで、足(ベース)を浮かせた状態にし、新たなトランジスタを付け加えるという方法で修理しています。変更後の波形は、振幅が十分にとれており、確実に分周回路が働くことを示しています。この後、調整をして修理は完了しました。感度チェックを行いましたが十分な感度が得られています。私の信号発生器から出力レベル1uV、1kHzで変調したAM信号を加えたところ各バンドとも良好に受信できました。


3.天面パネルのバネ折れ、ランプ切れ、SWバンド受信不能な6800
・このICF-6800は手に持って振るとカラカラと内部で音がします。たまに、衝撃を受けて欠けた筐体の一部が内部に入っている場合、このような音がすることがありますが、たいていの場合は天面パネルのバネを固定しているボスが折れてカラカラと音がしていることが多いです。このような音がするラジオは、内部をいじられていない可能性が高く、修理するものにとっては修理しやすいラジオといえるでしょう。


・修理のためにリアカバーをはずしたところです。やはり、想像していたとおり、オリジナルのままのようです。


・修理の様子です。この状態で通電し、どこが悪いのか見当をつけます。今回はPLLループ内のトランジスタの不良(劣化)です。


・交換したトランジスタとバックライト用のムギ球です。トランジスタのHFE(直流電流増幅率)は低いもので20、高いものでも40しかありませんでした。アナログ回路に用いる場合、HFEが20〜30あたりでも使用できるところもありますが、今回交換した場所は、HFEの値が直接効いてくるところなので、やはりHFE低下は動作不良の原因になります。ただし、このトランジスタは、Creが小さく、場所(回路)によってはまだ使えそうなので、捨てずにとっておくことにします。ムギ球は8〜10V程度のものを使います。


・この写真に写っている右側上のスプリングと、その下のボス(プラスチックのかけら)が内部でカラカラという音を出していた原因物です。このボスは左の天面パネルホルダーの一部で、このボスにスプリングを固定して天面パネルがバタっと閉まるのを防ぐ仕組みになっています。私が見てきた20台近くのICF-6700,6800はこのボスがおれていました。これはボスの強度不足で、設計不良ではないかと思います。


・折れたボスの部分を直しました。天面のロックをはずすと、このようにバネの力で少し浮き上がります。パネルを閉めるときにもバタッと倒れなくなります。また、常に上に開くように力がかかっているので、スピーカーから大きな音を出したときにも、天面パネルのびりつき防止に役立っているかもしれません。


・修理、調整の終わった6800です。6800は感度が良いですね。


2.アンテナ折れ、メーター不動、SWバンドが受信できない6800
・かなり程度が悪いICF-6800の修理です。まず、ロッドアンテナが根元から折れてしまっています。AMおよびFMは受信できますがメーターが動きません。SWはまったく受信できず、周波数表示は各バンドで固有の値を示しています。


・アンテナが台座の根元から折れており、新たなアンテナを挿入することが出来ません。中に残ったままになっているビスの部分を取り出す必要があります。写真はビスの残った部分の中心にドリルで穴を開けたところです。


・残っていたネジの部分を取り除いたところです。


・取り出したネジです。


・メーターの針が途中で止まったままになっていいます。メーターの針が動かないという症状の場合、原因は、コイルが切れているか、ピボット部分に遊びがなくなり固くなっているかのどちらかです。この写真のように針が途中で止まったままになっている場合は後者が多いです。したがって、直る確率も高いです。


・カバーをはずしたところです。


・ピボットのネジを緩め無事動作するようになりました。ピボット調整ネジは通常ネジロックされているので、うまく回せない場合には別の手段をとる必要があります。


・プリント基板を取り出し、点検しているところです。


・今回変更したトランジスタです。最近のゴミトランジスタは性能が良いので、適当に置き換えられるか所もありますが、場所によっては高周波用のトランジスタを用いないとだめなところもあります。この後、調整をして修理完了です。


1.ICF-6800Wの修理
・私のホームページを見た人から修理依頼が来ました。症状は典型的なPLLループ内の回路の故障(部品劣化)です。メーカーに問い合わせたが、もう部品がないのでムリと断られたとのことです。メーカーとしては製造打ち切り後かなりの年月が経過しており、代替部品はあったとしても直せる技術者がいないか非常に手間がかかるのでので部品がないとの理由で断ってきたのだと思います。ちょっと残念ですね。左図が預かったICF-6800Wです。国内で販売されたものはICF-6800でWが付かないモデルです。これはワールドワイド対応の6800で、リアに電圧切り替えスイッチが付いており、240Vまで対応できるようになっています。




・リアカバーに面白いシールが貼付されていました。写真ではちょっと見づらいですが、よく見るとR事とあり、また、アメリカ向けに改造と書かれています。つまり、このラジオは一般海外向け(100V〜240Vで動作する)に生産されたものを当時のソニー潟宴Wオ事業部がサンプルとしてアメリカ向けに改造したもの(多分FMバンドの変更)でしょう。



・電圧切り替えスイッチの部分です。コインなどで矢印をまわし、使用電圧にあわせます。



・リアカバーをはずすと切り替えスイッチが見やすくなります。以前6800を修理したときに、この左側の丸い穴は何のためだろうと思っていたのですが、ボルテージ・セレクタ用の取り付け穴だったのです。


・本機の不良症状は、SW帯は周波数表示がバンドセレクタによって変化はするがチューニングダイアルを回しても値は変化しない。バンド切り替えスイッチをゆっくり回すと途中でどこかの放送を受信することがある。MWは問題なく受信でき、周波数表示もほとんど問題ないが、周波数が高いところ(1500kHzあたりより高い周波数)を受信すると表示がおかしくなることがあるといったところです。信号をトレースするためにシャーシーを取り出しました。写真はシャーシーを引き出し、回転ダイアル部分を切り離しメインシャーシーをひっくり返した状態です。この状態でPLLループの一部分の波形が観測でき、その様子から大体の不良内容が判別できます。



・これは1/2分周回路の入力側の信号波形です。振幅が小さく、センターが高いほうにシフトしています。振幅は少なくとも3〜5Vp-pほしいところです。原因は回路のゲイン不足です。一番怪しいのはトランジスタの性能劣化です。



・トランジスタを交換するにはまず、基板を取り外し、バンドセレクタ用のバリコンをはずす必要があります。



・バンドセレクタのブロックを取り外しました。これをはずすと、取り付け後、再調整を行う必要があります。よく劣化するトランジスタはシールドケースの中にマウントされています。この状態にまで分解できれば修理は比較的簡単です。また、この状態でも動作はするので確認しながら修理できます。



・やはりシールドケース内のトランジスタが劣化していました。3個交換しました。写真は交換後のものです。これらの交換により、10MHz帯のバンド(10MHZ〜19MHz)は受信できるようになりましたが1MHz帯と20MHz帯は周波数が高い帯域で依然として受信できません。



・一番手前のトランジスタも交換しました。10MHzの信号とVFO-2からの信号とのミキサーとして働くトランジスタです。取り外したトランジスタのhfeは20そこそこでした。



・左が取り外したトランジスタ。右が手持ちのトランジスタの中で使えないかと持ち出したものです。C930と性能的にまったく同一ではありませんが、6800のPLLの周波数帯域であれば使えるようです。



・今回の修理で取り外したトランジスタです。すべて2SC930でした。hfeは20台が2個30台が2個でした。ちょっと値が小さいように思います。



・交換後の分周器入力波形です。十分な振幅が得られております。後は調整をすればOKです。


メールはjnkei@yahoo.co.jpへ

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