KENWOOD(TRIO)のチューナーを載せています


KT-9900

・1978年にトリオ(ケンウッド)から20万円で売り出されたFM専用チューナー(下)です。大きさ比較のためにソニーのFM専用チューナー:ST-5000F(上)と重ねて写真を撮りました。
 FM放送がうまく受信できず(感度が悪く、TUNINGメーターがふらつく)、また、受信しているとノイズがでるとのこと。JVCケンウッドサービス横浜SCに修理に出したものの「コンデンサー、IC、コイルが入手不可により大変申し訳ございませんが修理できませんでした」という修理報告書とともに修理にやってきました。確認したところ、確かにバリバリという音が不定期にでます。また、DEVIATIONメーターが頻繁に大きく振り切れます。DDLランプも点灯しないようです。
 不具合の原因はJVCケンウッドのサービスが言うように本当にコンデンサー、IC、コイルの不良なのでしょうか。セットが複雑で、修理できるエンジニアもいない(昔の高級機を修理できるベテランのエンジニアはリストラで居なくなってしまっている)ので原因を良く確認もせずにもっともらしい理由を付けて修理を断るメーカーは特に最近多いです。


・天板を取り外したところです。右側の黒いシールドケースに入っているのがフロントエンドです。中央がIF基板です。左側の基板がMPX回路やラインアンプが載っている基板です。DEVIATIONメーターの駆動回路も載っています。背面のパネルに付いている基板はパルスカウント基板です。この基板でFM信号を正確にオーディオコンポジット信号(主信号(L+Rのベースバンド信号)、19kHzのパイロット信号、および38kHzでAM変調されたL-R信号の合算された信号)に復調し、次段のMPX基板へ供給します。



・セット内部を底面から見たところです。電源トランスが右側にぶら下がっています。上部(背面側)にあるのが電源基板、中央にあるのがDDL(Distortion Detect Loop)基板です。



・今回の不具合原因はいくつかのIC不良でした。本機には日立製の高耐圧ローノイズプリアンプIC:HA1457がいくつも使用されていますが、このうちの4個が壊れていました。このICは壊れやすいのでしょうか。特に無理な使い方をしているようには見えませんが。DDL基板の3個とパルスカウント基板の1個を交換しました。DEVIATIONメーターが不定期に振り切れる原因はDEVIATIONアンプに使われていたOPアンプの不良でした。



・DDL基板の回路図と今回交換したICを示します。

修理完了後、ST-5000Fと聞き比べをしてみましたが、さすがにKT-9900はいい音がします。高域まで歪み感なく再現できている感じがします。話がそれますが、最近のFM放送はDEVIATIONが100%を頻繁に超えているようです。少しでも大きな音が出せるように変調を深めにしているのでしょうかね。

本機のブロック図を下記に載せます。ブロック図を見ただけでも凝った回路であることがわかります。部品点数も非常に多いです。




L-01T

・1979年にトリオがKENWOODブランドで発売したFM専用チューナーです。当時の価格は16万円でした。本機の特徴は何といっても磁性体の使用を極力避けた構造になっていることでしょう。筐体は木と圧縮紙、アクリル板などを使用しています。そのため、大きさの割には軽く(10kgを切っています。KT-9900は15kgあります)、持ち上げたときに違和感があります。本機はオークションで落札したが全く受信せず(前面パネルのダイアルライトは点灯している)、チューニングつまみのタッチセンサーも動作していない状態ということで修理にやってきました。


・背面の写真です。RF入力端子はFコネクタのみです(右端に付いている端子)。中央に付いているスライドスイッチはダイアルライトのオートOFF機能(チューニングつまみから手を放すと数秒後に自動的に消灯する)のON/OFFスイッチです。



・セットを底面から見たところです。黒色の底板は紙圧縮板のような感じです。MDFかもしれません。



・天板の裏側の写真です。両サイドはパーチクルボード、天面も木製で通風孔にはプラスチック(強化ナイロン?)を使用し、磁性体の排除に努めています。



・セット内部を上方から見たところです。左側の黒いシールドケースで覆われた部分がフロントエンドです。その後ろに電源トランスが2個付いています。右側の基板のうち、後部が電源基板、手前がIF以降の回路が載っている基板です。



・底面から内部を見た写真です。内部はフレーム構造になっており、各基板やトランス等の部品がフレームに取り付けられています。安いモデルはケースの底板に部品を取り付ける構造をとりますが音質的にはフレーム構造のほうが良いようです。



・本機は電源が壊れていました。整流回路のケミコンが液漏れを起こしています。また、トランジスタが1個破損していました。
 ところで、本機にはヒューズが見当たりません。回路図上にも無いことから、一般的なヒューズは本機には使われていないということになります。大半の機器には使われているヒューズがどうして付いていないのでしょうか。それは、ヒューズを入れると音が悪くなるからです。では、本機は安全上、どのような保護対策が取られているのでしょう。おそらく、電源トランス内に温度ヒューズを設けて、二次側がショートしたり負荷が想定以上に重くなった場合にトランスが発熱し、その熱で温度ヒューズが溶断し、発煙・発火や2次被害を防止できるようになっているのでしょう。


・交換のために取り外したケミコンです。ケミコンのスリーブにTRIO、KENWOODのロゴが印刷されていることから、これらのケミコンはトリオが日本ケミコンに特注したものでしょう。



・電源回路部分の回路図と今回交換した箇所を示しますが、どうもケミコンの耐圧がぎりぎりようなのでちょっと不安です。ただし、ここに使われているケミコンは特注のケミコンなので実際に何ボルトの耐圧があるのかはケミコンの納入仕様書がないのでわかりません。おそらく表示電圧以上の耐圧があるのだと思います。新たに用いたケミコンは耐圧が高いものに交換しました。



・フロントパネルのムギ球が何個か切れていたり、ソケットごとなくなっていました。基板側の銅箔パターンはソケットの抜き差し回数が多かったためなのか、パターン剥離している箇所がいくつもありました。ソケットも入手できないのでムギ球(8Vの電球)の足を直接パターンに半田付けしました(下側の写真)。


本機のブロック図を下記に載せます。




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