1.トイレからの怪電波
水洗式トイレから妨害電波が出てAMラジオ、特に中間周波数455KHzを用いているスーパーヘテロダイン式ラジオに影響を与えているという報告がラジオ・メーリングリストの方からあり、我が家はどうかと確かめてみたところ、やはり妨害電波が出ているようです。どのような症状になるかというと、先ず、トランジスタラジオをトイレ内に持ち込んだときには、どの局を受信しても、ピーッという音が入ります。離調するに従い、その音は高くなります。バーアンテナで受信しているトランジスタラジオの場合には、トイレから3mほど離せばほとんど気にならなくなりました。ただ、トイレ内では実用上使用できません。次に、空中線(アンテナ)を張るタイプのラジオの場合(代表的なラジオに5球スーパーがあります)には、トイレから離れた壁コンセントから電源をとってもピーっという音は消えません。これらより、トイレからは直接輻射される妨害電波と、電灯線を経由して撒き散らされる妨害電波があるようです。いずれにしても迷惑な話です。そこで、水洗式トイレの製造元であるTOTOに状況を説明しました。訪れたTOTOは最初、便座の裏側にアルミ箔を貼付しましたが全く効果なし。後日、別の人がウォッシュレットの取扱説明書を持って訪れ、“取り説にはこのように、ラジオにノイズが入る時にはラジオを離してくださいと書かれているんですがねえ”とウォッシュレットには問題がないかのような説明をされました。しかし、狭いトイレの中、どこにラジオを持って行こうがビートは消えません。このビートの原因はウォッシュレットから455kHzの強烈なキャリアが出ており、これがAMラジオのIF周波数とビートをおこしているためです。仕方がないので、トイレの中で聞くラジオはIF周波数と局発を15kHz程度ずらしました。これで、トイレの中でラジオを聞くことはできるようになりましたが、問題は電灯線で使用するラジオです。5球スーパーをはじめ、IF周波数が455KHzの総合アンプ(レシーバー)やチューナーなど何台もあり、これらの局発やIF周波数はいじりたくありません。そこで、手持ちのフィルターを試してみることにしました。
・最初、このようなフィルターを壁コンセントとウォシュレットの間に入れてみましたが、効果のほどは感じられませんでした。高い周波数のノイズに対しては効果はあっても、数百キロ程度の低い周波数には効果がないのでしょう。

・次に試したのが、左の写真のフィルターです。下に内部の回路図と定数を載せましたが、アクロスコンとラインバイパスが入っており、フィルターの筐体を接地する必要がありますが、電源ラインをとおって漏れ出すノイズに対しては効果がありそうです。早速ためしてみると、フィルターの筐体を接地しないとやはり効果は半減しますが、接地した場合にはほとんど問題にならない程度にまで軽減されました。実験のため、バラックで組んだ結果です。ひまを見つけてアルミの箱にでも入れようと思います。


先日、スペアナで妨害電波の強度を測ってみました。
右の図は約400kHzから900kHzの間の電波の強さを表しています。2階のベランダから下方に3mほどたらした電線をスペアナに入力して観測しています。尚、問題のトイレは1階の一番端にあり、距離的には最も離れています。
さて、一番上の図はウォッシュレットをコンセントから抜いた状態です。この時には455kHzのところに妨害電波はありません。それよりも周波数の高いところにはNHK第一放送局(594kHz)、NHK第2放送局(693kHz)、AFN(810kHz)などの電波が受信できているのがわかります。
真中の図はウォッシュレットに通電した状態です。このとき455kHzの電波が出ているのがわかります。放送局の電波よりも少し弱いですが、これでもスーパーヘテロダイン受信機には“ピー“という音に変換された耳障りな音として聞こえます。
一番下の図は便器に着座した時の様子で、人体からの輻射も手伝って盛大にノイズが撒き散らされています。この時には更に耳障りな音になります。

そこで、上記のフィルターを追加した時にどの程度妨害電波が軽減されるか調べたのがこの図です。便器に着座していない時にはこのスペアナではほとんどわからないくらいにまでレベルは落ちました。しかしながら、いったん着座すると、上の図のようにかなり強力に電波が出ます。これではやはりラジオに大きな影響を与えます。また、着座したままでトランシーバーを使おうとしたら盛大なノイズが飛び込み、相手の声が判然としなかったです(なぜ、トイレでトランシーバーかというと、トイレと2階の部屋とで交信しながら、このスペアナの波形をとったためです)。 いずれにせよ、メーカーにはもっとノイズの出ないものを作ってもらいたいです。また、ユーザーからのクレームに対しては妨害電波の周波数をずらすとか、何か手を打つべきでしょう。



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