・DVP-S9000ESとSD-9200の比較
ソニーのDVP-S9000ESと東芝のSD-9200を比較してみた。どちらもプログレッシブ出力対応、価格もほぼ同じ(ソニーが20万円,東芝が22万円)である。大きな違いは、ソニーがSACD対応で、2チャンネル出力。一方の東芝はDVDオーディオ対応、ドルビーディジタルとDTSをフルデコードし6チャンネル出力を備えていることである。

・フロントパネルを比較する
・上が東芝のSD-9200、下がソニーのDVP-S9000ESである。東芝のデザインは少し安っぽく見えるが、ボタンを押したときの感触は悪くない。トレーの動作も機敏である。一方のソニーDVP-S9000ESは大変ユニークなデザインをしており好みが分かれるところである。シャッターが内側に入り、薄いトレーが出てくる。操作パネルはタッチスイッチになっており、軽く触れるだけでよいのであるが、どの時点でスイッチが入るのか判然としない。また、文字が大変読みにくく、私のような記憶力のない年寄りにはちとあつかいにくい。


・内部を比較する
・SD-9200の内部。大変すっきりしており銅めっきシャーシが美しい。中央手前の黒い箱がドライブ部分。左側のたくさん穴のあいた箱が 電源ブロック、右手前の基板がプログレッシブ変換とビデオDACが載っている基板。その下にメイン基板がある。後部の基板はオーディオのDAC以降の回路とビデオのLPF以降がのった基板である。

・S9000ESの内部。中央手前の銀色に見える箱がドライブ部分である。左側が電源ブロック、右手前がメイン基板、後部の基板がオーディオ基板(オーディオのDAC以降の回路、オーディオ用電源回路)。その下にプログレッシブ変換、ビデオDAC、LPFがのった基板がある。


・ドライブ部分を比較する
・SD-9200のドライブ部分の写真。大変すっきりしている。トレーの動きが滑らか、静か、機敏と三拍子そろっている。他のプレーヤーもこうありたいところではあるが、コストアップにもなるため安いモデルでは無理か。

・S9000ESのドライブ部分の写真。東芝と比べると少しガタがある。動作音も少しうるさいような気がする。


・メイン基板を比較する
・SD-9200のメイン基板(実際には手前のほうにもう少し延びているのだが、写真には写っていない)。右手前のマルチコネクタでこの上に位置するプログレッシブ基板とつながる。ZORANと印刷されているICはAVデコーダーで、ドルビーやDTSのでコードも司っているものと思われる。その左斜め上に27MHzのクリスタルがみえる。その左横の小さなICはバーブラウンのIC;PLL-1700である。

・S9000のメイン基板。大きなICがたくさん載っている。写真では見えないが、左上のフレキケーブルの下にDSDのロゴが印刷されたICがある。


・プログレッシブ回路の比較
・SD-9200のプログレッシブ、ビデオDAC基板である。手前の一番大きなICがジェネシスのプログレ変換ICである。その上のICはアナログデバイセズのDACで、プログレ/インターレースの各信号(Y,Cb,Cr)をD/A変換している。一番上のICはジェネシスのプログレ変換ICをコントロールする専用マイコンである。

・9000のプログレッシブ、ビデオDAC部分である。上部に一部見えるフィルター群はビデオDACのポストフィルターである。手前中央の大きなICがジェネシスのプログレ変換ICで、東芝と同じものを使用している。一つおいて一番右のICがプログレ変換ICをコントロールする専用マイコン。その斜め左上がアナログデバイセズの54MHz12BitDACでプログレの信号(Y,Cb,Cr)をD/A変換している。中央より少し斜め左上部に27MHzのクリスタルが見える。その左側に見えるのが同じくアナログデバイセズのビデオDACでインターレースの信号(Y,Cb,Cr)をD/A変換している。


・ビデオLPFを比較する
・SD-9200のLPF。東芝の場合、プログレ/インターレース両方を同じDACでD/A変換しているため、その後に設けるポストフィルターも共用している。したがって、フィルターは3連のものが6個並んでいる。これらはコンポーネント(Y,Cb,Cr)用に3個、コンポジットビデオ用に1個、S端子のY用、C用にそれぞれ1個の、合計6個である。

・S9000の場合はプログレとインターレース用にそれぞれ独立したDACを用いているため、その後のフィルターもそれぞれに必要となり、合計9個のフィルターがならんでいる。また、プログレとインターレースの信号を切り替えるためにリレーを用いているようで、上部に2個並んでいる白い長方形の箱がそのリレーである。メーカーは富士通タカミザワ。ソニーはやたらとこのメーカーのリレーを使うようである。以前購入したアンプTA-F5000にもこのリレーがたくさんならんでいた。東芝と比較するとずいぶんとコストがかかっている。ユーザーにとってはお買い得か。


・電源を比較する
・SD-9200の電源部分。たくさん穴のあいたシールドケースを取り去ると出てくるのがこの基板である。いわゆるスイッチング電源であるが、きちんとシールドされており、オーディオやビデオに悪影響は与えていないようである。オーディオのディストーションの少なさやダイナミックレンジの広さはさすがである。

・S9000の電源部分。この写真では見づらいが、中央より少し右よりにR-コア・トランスが見える。もう一つRコアトランスがついているが右側の基板の下に位置しているため上からでは見えない。一つはオーディオ専用。もう一方がオーディオ以外の電源用である。左半分はシリーズレギュレータ基板であり、オーディオ以外の電源をここで作っている。シリーズレギュレーターを用いた場合、発熱が問題になってくる。S9000の場合には,筐体の横や底板にスリット(長穴)をあけて熱を逃がしている。


・オーディオ基板を比較する
・SD-9200のオーディオ部分。東芝はブルーのフィルムコンデンサーやケミコン、リレーを使用しており、見た目はこの写真以上に美しい。ブルーのケミコンは一瞬、スプラーグ(スプレーグ?)社のものかと思ったが良く見るとニチコンの高音質電源用のゴールドチューンというケミコンであった。その横にある茶色のケミコン(写真では黒っぽく写っている)は日本ケミコンのAWFという、これまた音質コンデンサである。使い分けして音質の向上を図っていると見える。これは今までの商品には見られなかったことで、いかに東芝が音質に力を入れているかがみてとれる。実は、これ以外にもさりげないチューンがいろいろとされており、好感の持てるセットである。手前に3個、等間隔で並んだ縦長の小さなICがアナログデバイセズのDAC:AD1853である。大変高性能なDACである。東芝のカタログによると、2chモードの時にはこのICをパラ使いするらしい。そうすることにより、ダイナミックレンジやディストーションが更によくなるのだ。基板左端に縦に2個並んでいるのが22MHz(44.1kHz*512)と24MHz(48kHz*512)のクリスタルでJRCのオシレーターICと組み合わせて発振させている。このクロックがオーディオDACのマスタークロックとなっている。

・S9000のオーディオ基板。左側が電源部分、右側がDACおよびローパスフィルター回路である。電源回路がずいぶんと面積を占めている。横に3個並んだ大きなケミコンは色こそ異なるがSD9200と同じニチコンのゴールドチューン。その上の3個のケミコンはエルナーのシルミックである。両面基板であるのに基板内ジャンパー線が何本も使われている。インピーダンスを下げるのがねらいと思われるが見た目は美しくない。ローパスフィルターに使われている抵抗は、東芝がチップ抵抗であるのに対し、9000はリードタイプを使用している。オペアンプも東芝は表面実装タイプであるが、ソニーはDIPタイプであり、ソケットをつければ容易にICを載せ変えできる。抵抗、コンデンサー、ICはメーカーを替えれば音質も変わるので、マニアにとってはソニーのほうが改造しやすい。 材料費はソニーのほうが高そうである。


------これ以降は筆者の勝手な想像によるものですので、メーカーの意図とは異なるかもしれません----

・東芝のチューン、ソニーのチューン。その1:ドライブ部分
ドライブ部分の構造によって音質は3割方決まってしまう。そこで少しでも音質を良くするためにどのようなことをやっているか見てみる。
左図はソニーS9000のドライブ部分のカバーであるが3角の形状に開けられた穴が目を引く(写真下部)。この穴は音質をチューンするための穴で、これをふさぐと音がこもってしまうのである。いわば息抜きの穴。化学繊維のネットでふさがれているのはこの穴からネジや部品が中に入り込まないようにするため(サービスマンの修理やマニアが改造をするときなど)ではないかと思われる。

こちらは東芝のドライブ部分の写真。特に何の変哲もない、一般的なドライブであるかに最初は見えた。ところが、実は黄色いシールに仕掛けがあったのである。


・東芝のチューン、ソニーのチューン。その2:上ケース
筐体の構造や強さによって音質は3割方決まってしまう。そのためにどのようなことをやっているか一例を見てみる。
左の写真はSD9200の上ケースの内側である。大きなステンレス(だと思う)の板を天板に貼り付けることにより制振効果をもたせている。貼り付ける材料や大きさにより効果も変わると同時に音質も変化する。よく制振されていると、上ケースをたたいたときコツ・コツという音がして高級感が出るが、あまりに制振しすぎると音も死んでしまうので注意が必要である。

ソニーの上ケースはたたくとビン・ビンという安っぽい音がする。その割にはラインアウトの音はまともである。変わったセットである。一般的には、たたいて安っぽい音がする機器からは良い音は出ないことが多い。9000の場合には安っぽい音はするが、それなりにいろいろチューンはしているようである。上部のフロントに近いところにはブチルゴムのようなものが貼られているしリアに近いところには板(パターンのないガラエポ基板?)が貼られている。


・東芝のチューン、ソニーのチューン。その3:ケミコン
電気部品やパターンの引き回し方により音質は3割方決まってしまう。コンデンサを例に取りチューンの仕方を探ってみる。

左の写真は両プレーヤーの一番大きいケミコンをばらしてみたものである。よく見るとそれぞれ音質には気を使っているようだ。東芝が採用しているケミコン(右側のブルーのもの)は背の高さを高くすることにより、巻方向の長さを短くすることにより、L成分やESRを低減しようとしている。また、この写真では良くわからないが、アルミ箔の厚さも少し厚いしエッチングの仕方も少し異なっているようである。交流エッチングをしているかも。一方のソニーが採用したコンデンサは部品配置上、背の高さを高く出来ない制約があったため、タブを各電極から2個ずつ出すことにより性能アップを図っている。外観だけからではわからないことである。

ソニーが採用している2タブのケミコン。


--------改造マニアのコーナー(自己責任で行ってください)-------
・東芝の名機SD9200をお持ちの方に朗報。 フィルムモードのLEDを点灯させよう!

SD9200、S9000ESのプログレッシブ変換部分を眺めていて面白いことを発見した。どちらも同じジェネシスのICを使っているため周辺回路もたいした違いはないだろうと眺めていると、“Still mode”、“AFM mode”、“VT mode”、“Power on”と書かれた文字を発見した(東芝の場合)。そこで、ソニーの基板の該当個所を見てみるとやはり同じように“SM”、“AFM”、“VT”、“Power ON”という印刷(下図の写真参照)があり、LEDとチップ抵抗がマウントできるようになっている。
ためしに東芝の基板にチップLEDとチップ抵抗(330Ω)を左図のようにマウントしてみた。抵抗は電源にプルアップされているのでLEDは左側がアノードになる。マウントした結果以下のことがわかった。
・“Still mode”はDVDを再生して最初の警告文が出ているときやスチル画面のときに点灯。
・“AFM mode”は映像がフィルム素材だと認識すると点灯しているようだ
・“VT mode”はビデオ素材のときに点灯
・“Power ON”は電源が入っているときには、遅い周期で点滅を 繰り返している

ソニーの基板である。東芝と同じように、LEDとチップ抵抗がマウントできるようになっている。ソニーの場合には、セットのフロントパネルにFILM表示がついているのでわざわざここにLEDを付けるまでもないが、ためしに付けてみたらやはり東芝と同じように点灯した。ディスクによってはAFMのLEDがブリンクするときがある。素材の編集時に2-3プルダウンの関係が一瞬くずれるためであろう。そのようなときには映像のほうもギクシャクすることもある(プログレッシブ接続時)。



・S9000ESのリージョンをかえる。
nebuさんのホームページを参考にさせていただき、リージョンスイッチをつけてみた。S9000のリアパネルにはコントロールSという、ソニー製機器間で信号のやり取りが出来る端子がついている。私がこれを使うことはないので、取り外し、ここにスナップスイッチをつけたのが左の写真である。詳しくはnebuさんのページを参照してください。
URLは    http://plaza.harmonix.ne.jp/~nebu/     です。

・リージョンフリーに改造することの危険性

上記のディスクは昨年(1999年)アメリカで購入してきたDTS5.1音声入りのディスクで、ケースにはリージョン1のマークが印刷されている。これらのディスクをリージョン1のプレーヤーで再生すると字幕は出ない。リージョン2のプレーヤーで再生すると日本語字幕が出る。逆に言えば、リージョン1のプレーヤーで再生しても日本語字幕は出ません。では、リージョンフリーのプレーヤーで再生すると。。。。。。。
私個人的にはリージョンフリーのプレーヤーより、リージョンセレクタブルのプレーヤーが良いと思う。リージョン1と2に設定できればたいていの見たいソフトは見られます。

・ソニーのDVDプレーヤーあれこれ
1997年春にソニーの初代DVDプレーヤー:DVP-S7000が発売されました。半年近く前に発売されていた東芝や松下のDVDに比べ、かなり高価でした(確か115000円)。発売後すぐ入手したのでメリットもありました。

DVP-S7000です。フロントパネルの一部が下にさがり,その中からトレイが出てくるのが特徴です。デュアル・ディスクリート・ピックアップ搭載で、CDRにも対応していました。電源はスイッチング電源とオーディオ専用にR-コアトランスを搭載していました。一見格好良さそうに見えるリモコンは大変使いづらいものでした。かなりお金はかかっているようです。

左側がs9000のオーディオ基板、右側がs7000のものです。どちらもリードタイプの抵抗や、DIPタイプのオペアンプを使用しているため、部品交換が容易です。あとでユーザーがチューンアップしやすいよいうに大きな部品を使ってくれているのでしょうか。さすがですね。



メールはjnkei@yahoo.co.jpへ

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