このラヂオは2002年12月に修理したものです。ナナオラ64B型と機銘板に書かれている七歐無線電氣商会のラヂオです。いつ頃のものか詳しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか。(2003.1.3作成)


・年末に修理の依頼を受け私の家にやってきたものです。前から見たところです。大きな傷は無く、つまみもオリジナルのようです。つまみは、左から順に、電源スイッチ、再生バリコン、選局バリコンとなっております。電源スイッチか筐体の横に付いているものも良く見かけますが、前面についているほうが、操作の面でも、修理の面でも都合がよろしい。保存状態は良いようです。


・裏面の様子

後ろ側から見たところです。裏蓋もきちんと付いております。写真には写っておりませんが電源コードが途中でぼろぼろになっておりこのままでは通電できません。また、たとえ電源コードが大丈夫であったとしても、古いラジオをいきなりコンセントに差し込んではいけません。特性が劣化している部品のために、受信できないか、受信できたとしてもすぐに故障してしまうでしょう。

・シャーシーを取り出してみました。スピーカーはシャーシにネジ止めされています。真空管を4本使用した並4受信機で、構成は24B、26B、12A、12Fとなっております。電源トランス近くに配置されているチョークコイルは交換されており、サイズが異なるため取付け穴位置が合わず、ネジ1本で止められています。また、結線も雑です。


・シャーシの裏側です。よくみると、何箇所か部品が交換されています。12Aのグリッドバイアス抵抗、カップリングコンデンサ、および26Bの負荷抵抗の種類が他のものと異なっているところから、オリジナルはCR結合ではなく、低周波トランス(段間トランス)を用いたトランス結合であったと思われます。シャーシー背面にもトランスが付いていたことをうかがわせる使用されていないネジ穴が2箇所あります。


まずは現物から回路図をおこしてみることにします。部品点数はそれほど多くはありません。ブロックコンデンサの陰に隠れて配線が見えない個所があるため、ブロックコンは取り外し回路を追うことにします。下図にその回路を示します。

・入手した時の回路です。抵抗の値に関しては、抵抗本体に値が書かれておらず、色によるマーキングがしてあるだけなので、テスターで測定し、当時の値は多分この値であろうと思われる値を書いています。コンデンサに関しては良くわからないものは値を記載していません。カップリングコンデンサとグリコン以外はブロックコンです。

・オリジナルはこのようなトランス結合だったと思われます。使用しているうちに、トランスの1次側が断線したため、トランスの変わりに抵抗負荷とし、コンデンサ結合の回路に変更したものと思われます。

・修理開始


・内部の配線の様子です。線材の被覆は硬化しており、所々ひび割れております。少し曲げるとぼろぼろと被覆が剥がれてしまいます。トランス結合からCR結合に変更するのに用いたカップリングコンデンサ(写真右中)は熱のためにワックスが溶け、埃が周囲についており、値が読めません。絶縁度も相当劣化している模様です。


・チョークコイルの手直し
今にも切れそうな細い線がボビンから出ており、そこに太くて硬い線材が接続されています。チョークコイル自体は絶縁度も問題なく、レアショートもしていない様子なので、引き出し線が切れないようにバンドで固定することにしました(写真右)。


・危険なパーツの取り外し
熱によりピッチがはみ出したブロックコンデンサ。何個かのペーパーコンデンサが一つのケースに入っているが、断線しているものと絶縁度が劣化しているものがあり、使用不可のため取り外した。また、線材も危険なところは取り外した。カップリングコンデンサも取り外した。案の定、絶縁度が劣化していました。


・危険そうなところの部品を取り外したところです。1次側の配線、2次側の整流回路、電力増幅回路、ヒーター配線その他を取り去りました。


・新しい部品を用いて配線しなおしたところです。オリジナルではシャーシの上に付いていたチョークコイルですが、穴位置が合わないため、シャーシーの内側に入れました(たまたま、ちょうど同じ間隔で穴があいておりそこに取り付けた。写真左下)。取り去ったブロック・ペーパーコンの代わりにケミコンを用いた。カップリングコンデンサはフィルムコンに変更しました。動作チェックもOKです。


・ラジオの音声周波数特性
ところで、ラジオの音声周波数特性はどれぐらい延びているのでしょうか。たとえばCDプレーヤーは20kHzまでフラットに延びております。DVDオーディオやスーパーオーディオCDは更に高域まで延びています。AMラジオの場合、帯域が9kHz(昔は10kHzだった)なので7〜8kHz程度は出ているのではと思われるかもしれませんが、実際はそんなに延びていないのです。今回修理した並4ラジオの特性を測定してみましたが、下図のような特性です。これでもまだ延びているほうで、最近のトランジスタラジオなどはずいぶんと高域が落ちています。



・修理が終わったナナオラ64B型です。長時間つけていても電源トランスがほんのり暖かくなる程度。好調です。



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