ビクターの高2ラジオ:5R-25
オークションで落札したものです。内部が一部変更されていましたが、出来るだけもとの回路に沿って修復しました。
・正面から見たところです。左下のつまみが電源・音質切り替えスイッチです。音質の切り替えといっても、回路図(本ページの少し下がったところに載せています)によるとNFBをかけるかかけないかを選ぶようになっているので音質というよりは聴感上はゲインが少し変化する程度の違いだったかもしれません。この部分が再現できないのでなんともいえません。右下のつまみが音量、上についているつまみが選局つまみです。このつまみは右に回転するとダイアル指針が左に回転するので慣れないと違和感があります。
・入手時の内部の写真です。残念ながらスピーカーが一般的なフィールドコイルつきのダイナミックスピーカーに交換されています。本来のスピーカーはNFB巻き線付きの出力トランスおよび、HNC(ハムニュートラルコイル)付きのフィールドコイルが付いたスピーカーだったはずです。
・シャーシーを取り出したところです。
・シャーシーの内部です。左側中央に見える3個のアルミの筒の中にはアンテナコイルと段間コイルがそれぞれ入っています。干渉を避けるためお互いに直角に配置されています。
・シャーシーを上から見たところです。真空管ははずしていますが、左側からUZ-58、UZ-58、UZ-57、UZ-2A5、KX-80です。
・文字盤です。プラスチック(セルロイドかも)の上に文字が印刷されており、はげにくく経年変化にも強そうです。
・音量調節用のボリュームです。電流をかなり流すため巻き線抵抗が使われています。「16.6」と印刷されていることからこのボリュームは昭和16年6月に製造されたものでしょう。
・抵抗、コンデンサです。このころのビクターのラジオに使われている部品には容量や抵抗値を記載するのではなく独自の番号が印刷されています。
・シャーシー後部に貼付されている機銘板です。
・回路図です。S1とS2は連動しており、最初の動作でS1がショートして電源が入り、さらに回転させるとS2の接点がアースから離れてNFBがかかるようになっているようです。
・修理後の内部の様子です。抵抗がパラ付けしたりシリーズになっているのは手持ちの抵抗を用いて合成しているからです。本来、1本の抵抗で済ませられればもう少し格好が良くなります。
・シャーシーを上部から見たところです。
・今回用いたスピーカーです。フィールドコイルに追加する形でHNCが巻かれています。出力トランスがあいにくNFB巻き線付ではなかったため、フィードバックはかからない回路となりましたがHNCの効果は確認できました。
・左の写真はハムニュートラルコイルの効果を示しています。上の波形は出力トランス二次側の波形(無信号時のハムのレベル)で、約30mVp-p あります。通常はこの信号がスピーカーのボイスコイルに加わるわけですが、フィールドコイル上に巻かれたハムニュートラルコイルからのハム電圧と加算してスピーカーに加えると、ハム成分がキャンセルされ、下図のように10mVp-p にまで小さくなっています。完全になくならないのは出力トランスに現れるハム成分と、フィールドコイルに流れるハム成分の波形や位相が完全に一致していないからでしょう。10mV のハム成分であれば少しブーンという音が聞こえる程度で、それほど耳障りではありません。
・修理後のセットの内部です。
・動作させているところです。動作させたところ、なかなか高感度であることがわかりました。アンテナ端子から10uV の変調波を入れたとき、ボリュームMax でS/N=10B 程度ではないかと思われます(受信周波数1000kHz にて)。ただし、5 球スーパーとは異なり、AVC 回路が無いため、受信局の電波の強さがもろに音の大きさとなって現れます。そのため、選局するたびにボリュームを調整しなければならないという不便さはあります。また、このラジオで低音がたっぷり入っている音楽放送を受信すると(特にAFN の放送)どうも歪っぽい音がします。とはいうものの、一般的な放送を聴いている分に
は大変聞きやすく、良い音で鳴るラジオであるといえるでしょう。
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