・パイオニアのレシーバー(総合アンプ):SX-304AとC200です。
・こちらがSX-304Aです。下の写真のC200と内部回路は同じです。FMステレオ/AMチューナー、フォノイコライザー、外部入力端子を備えた真空管式総合アンプです。メインアンプ部分は6BM8プッシュプル、MPX部分は6AQ8と6AN8で構成。フロントエンドはアルプス製で6AQ8を使用、FM2連、AM2連の4連バリコンがついています。AMの局発・混合は6BE6,IFアンプは6BA6,6BA6,6AU6という構成です。その他、フォノイコライザー、プリアンプ部に12AX7が2本使用されています。
・こちらはC200です。真空管式のラヂオに比べると総合アンプは人気がないため、フリーマーケットでも値段が安く、ついつい購入してしまいます。C200も行きつけのフリーマーケットで3000円で購入しました。立派なウッドケースに入っております。SX-304Aは単品で販売されていたのに対し、こちらはスピーカー等と一緒にシステム販売されていたそうです。当時のスピーカーやプレーヤーはあいにく手元にありません。
・内部の写真です。右手前に見えるのが電源トランスで、銅板のショートリングが付いた立派なものです。その左側の穴のあいているケースの中には平滑回路の抵抗が入っています。+B電圧はシリコンダイオードによる倍電圧整流で得ています。
・フロントエンド部分の拡大です。このブロックにはアルプスのマークが付いています。フロントエンドはアルプス電気から購入していた模様です。バリコンの上に見えるのがAMのアンテナコイルです。
・アンプ部分の写真です。6BM8が4本使用されています。4本のうち3本は松下製でしたが、残り1本は東芝でした。左右に見えるのが出力トランスです。8オームと16オームの出力端子つきです。16オーム端子から6BM8初段にNFBをかけています。リアパネルにあるスライドスイッチで8/16オームを切り替えます。
・シャーシーの裏側の写真です。部品がぎっしりと詰まっております。電源トランス(左下)の右側に見える2つの大きなチューブラコンデンサーは+Bの倍電圧整流用のCです。
・内部を点検していて発見しました。電源ラインに入っているアクロスコンがパンクしてしまって、中身が飛び出しています。これはオイルコンなのですが、ひょっとしてPCBが使われているのでしょうか。このタイプのオイルコンが10個ほど使われています。ちょっと心配です。
・左右各チャンネルの出力管のカソード抵抗を共通で使用しています。黄色い線で囲っている部分がそのバイアス抵抗(130オーム/5ワット)とバイパスコンデンサ(50u/25v)です。抵抗値に対しケミコンの容量が小さすぎると思います。これでは低域でゲインも落ちるし、左右のクロストークもかなりあると思われます。修理が完了したら測定してみなくては。
・メインアンプ部の回路は左図のようになっており、出力管のカソードバイアスだけでなく、+Bラインも左右共通になっていることがわかります。左右のクロストークが気になるのですが、一般的に用いられている方法なのでしょうか。自作するのであれば電源の平滑回路を含め、それ以降は左右独立させたいところです。
・まず、破裂していたオイルコンを交換します。このオイルコンはACライン間に挿入されており、一般的にはアクロスコンと呼ばれています。アクロスコンの両端には交流電圧が加わるため、安全上、ちゃんと規格に合格したコンデンサを使う必要があります。左の写真(上)は壊れたオイルコン。下は各国の安全規格に合格しているアクロスコンです。
・このコンデンサもアクロスコン用です。UL(アメリカ)とCSA(カナダ)の安全規格に合致しているというマークが見えます。昔のラジオには一般的なペーパーコンが使用されている場合が多いですが、迷わず交換しましょう。
・オイルコンを交換し、整流ダイオードや平滑コンの異常をチェックしたあと、問題なさそうだったので、電源を投入。ところがすぐにニューズが切れてしまいました。特に異常は見当たらないので、これはケミコンの漏洩電流増加によるものと断定し、徐々に電圧を上げていったところOK。10分程度通電し、各電極の電圧チェック。異常なし。とりよせた回路図に載っている電圧とほぼ同じことを確認。その後は普通に電源を投入してもヒューズが切れることはありませんでした。
CDプレーヤーを接続して音出し。ちょっと寝ぼけた音がします。また,少しハムが聞こえます。
結局6BM8ペアチューブを交換、カソードのデカップリングコンデンサーに1000uFを追加、
平滑回路のコンデンサーの容量アップ(ほんの少し)によりだいぶまともな音になりました。
このあと、AM放送もOKでしたが、FMを受信してもステレオにならず、またステレオインジケーターも点灯しません。回路図とにらめっこしながら原因をさがしたところ、意外な結果が待っていました。
左の写真はMPX回路の部分ですが、Bのしるしをつけた茶色のコンデンサの接続場所が回路図と異なっています。回路図に相当する場所は一つ隣のラグ端子なのです。あとから半田付けした様子もないので最初からこうなっていたのではないでしょうか。また、Aのしるしをつけたコンデンサ:5000pFは回路図では100pFとなっています。これも、ちゃんと、からげ半田されており、最初からこの定数がついていた模様です。これらを回路図どおりに変更したところ、ちゃんとステレオ受信でき、インジケーターも点灯しました。念のため、もう一台のSX-304Aの結線をチェックしたところ、回路図どおりになっておりました。
これはc200のリアパネルですが、PASSのシールが貼付されております。生産ラインでのチェック漏れでしょうか。ただ、この状態でもFMがステレオにならないだけで,モノラルでは十分楽しめる状態でしたので、ステレオ放送が少なかった当時はユーザーも不良に気付かなかったのかもしれません。弱電界地域ではなおさらです。
修理を終えて無事復活したC200です。フロントパネルやダイアルスケールも洗浄した結果、大変きれいになりました。つまみはアルミの削りだし品。デザインも洗練されており,パイオニアの高級機といったイメージです。6BM8がかなりの熱を出すため,筐体の上部はパンチングメタルで風通しをよくしています。冬場にはこの総合アンプでラジオを聞くのもなかなか良いものです。AMのS/Nの良さはたいしたものです。最近のマイコン内蔵、周波数シンセザイザー方式のノイズっぽい音とは一味違います。FMに関しては、AFCが常にONになっているため現在のような多局化時代にはちょっとつらいものがあります。
後ろから見たところです。
SX304の回路図をここに載せましたがたいへんおおきい(280kB)ので注意してください。
メールはjnkei@yahoo.co.jpへ
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