・TFM-110

・TFM-110です。昭和40年4月に12500円で発売されました。トランジスタは11石使用されています。当時としては大変感度がよく(現在でも、ウォークマンなどに申し訳程度に付いているラジオとは比べ物にならないほど高感度です)評判でした。最近の短命に終わりがちな商品とは異なり、かなり長期にわたって製造されたようです。私の所有しているものは中を開けてみると,42.4と記された部品が載っていることから、昭和42年4月にはまだ生産されていたのでしょう。2年にわたるロングランです。


・本体正面の左側、ボリュームの近くのロゴです。写真ではわかりづらいですが、文字が単なる印刷ではなく、刻印されており、高級感があります。最近のものは印刷されているものがほとんどで、使用しているうちに文字が消えるものも有り、始末に悪いです。


・内部の写真です。上部に見えるのがバーアンテナ。左側の金色の箱がFMフロントエンド、その上の四角い白い箱はAM,SW用のポリバリコンです。後述のTFM110Fはプリント基板が1枚になり少しすっきりしました。とはいうものの、プリント配線板を使用しているにもかかわらずリード線の多さには驚きます。


・アダプターをつけるとFMをステレオで聞くことができます。


・TFM-110D

・TFM-110Dです。TFM-110の後継機で昭和41年1月に発売されました。ソリッドステート11と言ってはいるものの、トランジスタは12石と、1石追加されています。

・正面左上についているソニーのロゴ周辺の写真です。ロゴの下にはSOLID STATE 11とあるだけで、このページの上方にあるTFM-110の同部位の写真と比べるとずいぶんすっきりしています。トランジスタが1石追加になったため、本来なら12 TRANSISTOR と書きたかったところなのでしょうが、ソリッドステート11の名前が広く知れ渡っているため、このような表示になったのでしょう。


・TFM-110Dの内部の写真です。TFM-110とほぼ同じ様な構成です。

・リアパネルに貼付されている機銘板です。この部分を見ると12石であることがわかります。


・TFM-110F

・TFM-110Fです。昭和41年1月に発売されたTFM-110Dの後継機です。昭和42年6月に発売されました。13800円でした。TFM-110Dとくらべると、チューニングメーターが追加、スピーカーが楕円のものから丸型になった、内部のプリント配線板が1枚に集約された、といったところでしょうか。また、ボリュームの回転方向がTFM110とTFM110F以降のモデルでは逆になっているので、ちょっと戸惑います。かなり長期にわたって製造されたようで、何度かマイナーチェンジも行われているようです。2台所有しているラジオを調べてみたところ、プリント基板が少し異なります。




・TFM110Fの内部です。
プリント基板の上を数多くのジャンパー線が飛び交っています。パターンの数よりもジャンパー線の数のほうが多いくらいです。部品交換が大変でしょう。左側中央に見える金色の箱はFMフロントエンド部分で、このようにがっちりとシールドされていました。中にトランジスタ(2SC629)が3個、ダイオードその他が入っています。このフロントエンドやその上のポリバリコンはTFM110に使用されていたものと同じものかもしれません(前述の写真参照)。




・初期の回路(オーディオ出力部)です。トランジスタ2段で構成される低周波増幅段(X006,X007)はDCフィードバックを伴う直結アンプ構成をとっていますが、後期に発売されたものは下図の様にC結合による自己バイアス方式を採用しています。きっと、トランジスタのhfeのばらつきや電池の電圧変化、周囲の温度変化に対し、直結方式より優れていたのでしょう。


・後期に製造されたもの。C結合になり、部品点数が増えたが回路的には安定しているものと思われます。

TFM110は2台ともチューニングメーターが振れなくなってしまいました。原因はメーター内部の駆動コイルを支えているピボット部分に遊びが無くなり針の動きがぎこちなくなるか、動かなくなってしまうためです。


・チューニングメーターの針が振れなくなっていたのでほぼ同じ大きさのメーターと中身を入れ替えました。


当時発表されたTFM110Fの概略仕様です。
        回路方式  12石スーパーヘテロダイン
      アンテナ方式  MW:バーアンテナ160mm
                FM-SW:ロッドアンテナ6段160mm
          大きさ  幅180x高さ132x奥行50mm
           重さ  1050g
      アンテナ方式  MW:バーアンテナ160mm

                電気的特性
                AM部
       受信周波数  MW:530〜1605kHz
                SW:3.9〜12MHz
                FM部
       受信周波数  76〜90MHz
となっています。

ステレオで聞くにはステレオアダプターSTA110Fを接続する必要があります。

・STA110Fです。MPXデコーダーと低周波アンプを内蔵しており、TFM110Fと接続することによりFMステレオ放送が楽しめます。



・TFM110Fと接続したSTA110F(左)です。



・ソリッドステート・イレブンの比較です。手前からTFM110、TFM110F、ICF110B、ICF1100です。



メールはjnkei@yahoo.co.jpへ

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