・ICF-PRO70
・本機は1987年に発売されています。1984年にAIR-7(AVIATION)が発売されていますが、AIR-7はAM(150kHzから2194KHz)、FM、エアーバンドの3バンド(ほんの少し改造すればPSB(ポリスバンドと呼ばれている144〜174MHz)も受信)が受信できましたが、本機はエアーバンドの代わりに150kHzから108MHzまでカバーする受信機となっています。
 本機も故障が発生しやすい機種であると同時に直らない可能性も結構ある(部品入手できないので)受信機の一つです。今までに50台ほど見てきましたが、まともに直ったのは3〜4割程度です。不具合が発生するのは大きく分けるとボリューム(音量調節用とスケルチの各ボリューム)とケミコンです。ただし、ケミコンは漏れ出た液に導電性があり、また基板のパターンを腐食させるため、二次被害が出ます。代表的なものはパターン間のショート、スルーホールの断線、VCOやDDコンの発振停止、FM DETコイルやAM DETコイルの断線(漏れ出た電解液がコイルの中に入り、銅線を腐食・断線させる)、などです。


・リアカバーを外して内部を見たところです。カバーを外す際、カバー側に付いているバッテリーケースの端子と本体のシャーシー間がセラミックコンデンサで接続されているため、カバーを少し開けた状態でこのコンデンサの端子を外す必要があります。勢いよくカバーを開けるとセラミックコンデンサを壊してしまいますので注意が必要です。

・各基板間はフラットケーブル(フレキケーブル)とハーネスで接続されていますが、これらは脱着できません。フラットケーブルは切れやすいので要注意です。右上の少し斜めになっている基板が信号基板で、電波の受信から復調までを行っています。この基板に付いているケミコンは要交換です。その下の基板(スピーカーの上にある基板)がPLL基板でPLLのほかにオーディオアンプ、3Vレギュレーター、19Vを作り出すDDコンバーターが載っています。この基板のケミコンも交換が必要です。DDコンが入っているシールドケース内に2個のケミコンが付いており、このケミコンも要交換です。左隣の液晶パネルが付いている基板がマイコン基板、一番左側の基板がキーボード基板です。

・信号基板のケミコンが載っている部分の拡大写真です。ケミコンの足をよく見ると漏れ出た電解液で黒ずんでいるのがわかります(赤色の矢印の先端)。まず、ケミコンはすべて取り去り、周囲をクリーニングします。クリーニングは何度も丁寧に広範囲に行う必要があります。少しでも電解液が残っていると新たなコンデンサをマウントしてもうまく動作しないことがあります。角型コイルが何個か見えますが、隣にケミコンが付いているコイルは要注意です(FM DETコイルとAM DETコイル)。ケミコンから漏れ出た液がコイル内部に浸透している時があり、既に断線しているものもありますが、断線はしていなくても、ケミコン交換後に調整しようとしてコアを回したとたんに断線することもあります。これらのコイルが断線していると交換用のコイルが手に入らない(特にFM DETコイルと第二局発コイル)ので私の場合は修理をあきらめています。AM DETコイルが切れている場合にはAM復調とSSB復調ができませんがまだ何とか対処法はあります。

・この写真はPLL基板で、3Vレギュレーター付近の様子です。ケミコンの液がこのICにまで及ぶと、出力電圧が低下したり、逆に高い電圧が出ることもあります(液がどのように広がるかによる)。

・ケミコンを取り外したあとの基板の状態です。電解液がケミコン周囲に広がっているのがわかります。近くにスルーホールがあり、この穴を通って反対側にも電解液が及んでいますので、入念にクリーニングが必要です。反対側にはモード制御用のトランジスタ群があり、影響を及ぼしています。



・この写真もPLL基板でDDコンのブロック部分です。小さなシールドケースで覆われているため、見落としがちですが、この中にも2個のケミコンが使われており、漏れ出た液で発振が不安定になることがあります。写真はケミコンを取り去った後の様子です。基板の部品面、半田面とも入念にクリーニングが必要です。電源スイッチを入れても19Vラインがすぐに立ち上がらない、あるいは高い周波数の帯域が受信できない(スキャンすると周波数が高くなってゆく途中でスキャンが止まってしまう)といった症状の時にはこのコンデンサの液漏れを疑ってください。

サービスマニュアルや回路図はいろんなサイトに掲載されているので入手は容易だと思いますが、とりあえず回路図を添付します。




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