・ICF-SW77
シンセサイザー方式のラジオにはあまり興味がなく、保有台数も少ないのですが、ICF-SW77を修理した写真がたまってきたので一部載せることにしました。ICF-SW77は経年変化で内部のケミコンが液漏れをおこし、漏れ出た電解液でパターンの腐食、断線、パターン間のショート(絶縁度劣化)等により受信不能に落ちいるようです。 現時点で動作しているSW77であっても、今後不具合を引き起こす可能性があるので、シリアル番号(製造時期)にもよると思いますがケミコンは交換しておいた方が良いように思います。問題ないかどうかの見分け方は、FM放送を受信してみるとわかります。周波数が既知の局を受信する際にジャストチューンの時に音が歪むが0.05MHzどちらかにずらすときれいに聞こえるという症状が出ていれば要注意です。シリアル番号が2万番台、3万番台、4万番台、5万番台、6万番台のSW77を修理しましたが2万番台のモデルが一番程度が悪かったです。1万番台より若いSW77は修理したことがないので何とも言えませんがさらにひどい状態ではないかと思います。とはいうものの、ケミコンを交換すれば快適に受信できるようになります。注意点としてはケミコンを外したあと、周囲に広がっている電解液をいかにきれいにふき取れるかが成功のカギになってきます。
英文ですがサービスマニュアルはネットでダウンロードできます。たとえば、
http://elektrotanya.com/?q=showresult
からダウンロードできます。検索すると他にもダウンロード可能なサイトがあるようです。

なお、1993に発行されているサービスマニュアルのSUPPLEMENT-1によると、途中から回路が変更されています。どのシリアル番号から変更されているのか不明ですが、2万番台(21685)のSW77は少なくとも変更前の回路でした。3万番台(34185)は変更後の回路のようです。

・1991年に発売されたICF-SW77です。長波・中波・短波・FM(FMはヘッドフォン使用時はステレオになります)に対応した受信機です。放送局をプリセットした後は大変選局しやすいモデルです。乾電池を抜き去ってもプリセットした局が消えない点は高く評価できます(ICF-2001Dはせっかくプリッセットした局がコンピューター用電池を交換するときに消えてしまいます。そのため、3Vラインの両端に1Fのスーパーキャパを追加したほどです。2001Dのページに記載)。
 この機種に対する不満は、ジョグダイアルをくるくる回して選局する際、プツプツという耳障りな音がする点です。短波受信時に特に気になります。せめてICF-2001Dレベルに抑えてほしいところです。あと、FMステレオ受信時にラインアウトからの信号がモノラルで出てくることです。ステレオで出すにはヘッドフォン端子にヘッドフォンを挿入しておく必要があるのです。最初、壊れているのかと思い、取説を見たら、そのような記述がありましたので、これは仕様らしい。変な仕様です。


・後ろから見たところです。本機のシリアル番号は21685です。かなり初期のモデルです。入手時の状態としては電源を入れ何か操作するとすぐに電源が落ちてしまい、受信不能という代物でした。


・内部の様子です。既に悪い予感がします。


・パワーアンプIC周辺を見たところですが、ICの足に漏れ出た液が付着し、はんだが腐食しています。反対面にマウントされているケミコンから漏れ出た液がスルーホールを伝って裏面にまで影響を及ぼしているのです。近くの抵抗の周囲にも液が及んでいます。こういった箇所が何カ所も見られます。


・メイン基板単体を取り出したところです。この写真ではわかりづらいですが、拡大すると不具合が良くわかります。


・パワーアンプIC付近の拡大です。ケミコンの足が変色しているのがわかります(赤い矢印で示す)。これはかなりひどい状態です。この液が近くのフラットパッケージのICの下部まで達しています。




・腐食が進んでいるとケミコンはほんの少し力を加えただけでポロリと取れてしまいます。ケミコンが付いていた跡はひどい状態になっています。


・ケミコンをほぼ交換し終わったところです。不思議なことに全く液漏れしていないケミコンもあります。メーカーが異なるのか、製造ロットが異なるのか、よくわかりません。



ケミコンを交換後、通電してみると、たいていの場合、何とか動作する状態になっていますが、完璧とまでは行かない状態です。その原因のひとつは、拭き取れたと思っていた電解液がわずかに残っていたためです。アナログスイッチICやオペアンプ周辺は特に注意を要する箇所です。インピーダンスが高いので少しの電解液でも影響を与えます。また、別の原因として、腐食によるパターンの断線の見落としがあります。レジストがかかっているので見にくいですがパターンの色が変色している細いパターンは要チェックです。回路図とにらめっこしなければなりません。
何台か修理をすると徐々にこつがわかってくると思います。時間のある方はチャレンジしてみてください。


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以下は修理の時に撮った参考写真です。あまり参考にならないような気もしますが。


【参考写真1.ソニーサービスが直せないといって戻してきたICF-SW77】
修理にやってきたのでソニーサービスが何をやったのか見てみました。まず、裏蓋を取り外したところです。少なくともFMのセラミックフィルタを2個とIC301を交換したようです。やみくもに交換すればよいというものでもないと思いますが。。。



次に基板の部品面を見てたところです。かなりの部分にワックスが塗布されているのがわかります。きっとサービスが塗布したものだと思います。最初からこんなに広範囲にワックスが塗られた基板は見たことがありません。写真ではわかりづらいですがケミコンはすべて交換されていました。

ここまでやってもFMの音声の歪が直せなかったというのは情けないですね。ソニーサービスの技術力が無いといっているのではありません。サービスマンが直せるような的確な情報を出していないか、直せないような設計をしているエンジニア側が悪いのです。


【参考写真2.製造不良で端子間がショートしていたがライン検査を通り抜けて出荷されてしまったICF-SW77】
このICF-SW77は中波を受信しているさい、ある周波数を境に急に感度が変化するので気づきました。基板をよく見たらデーターラインD0, D1, D2の中のD0とD1ラインがコネクタ部分でブリッジしていました。本機はFM, LW, MW, SW1-SW5の各バンドに対して同調回路の同調周波数を適正な値にするために各バンドごとに同調回路を切り替えたりバリキャップに与える電圧を切り替えたりしていますが、これらの制御にこのD0-D2ラインを使っています。ライン間でショートが起きると想定外のところでバリキャップに加わる電圧が変化し、ゲインが変化するのです。ただし、電波がある程度強いとAGCがかかるので発見しにくい不良です。



【参考写真3.初期モデルと改良型ではどこが違うのか】
マイコン基板では、初期モデルがDDコンを基板上に載せているのに対し、改良型では別基板に移してシールド板金でがっちり囲っています。



メイン基板では、改良型にはシールド板金が追加されています。



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